鑑定評価額と査定価格は違うの?相続時の不動産鑑定で気をつけること

不動産の価値は知るには、不動産会社の行う「不動産査定」不動産鑑定士の行う「不動産鑑定」の2つの方法があるのをご存知でしょうか。

今回は不動産査定と不動産鑑定の違いについてお伝えします。

■不動産鑑定と不動産査定の違い

自分の所有する不動産や、将来相続する可能性のある不動産について、どのくらいの価値があるのだろう?と思った時は、その価値を知る方法として2つの方法があります。

不動産会社に依頼する「不動産査定」と、不動産鑑定士に依頼する「不動産鑑定」です。

不動産査定と不動産鑑定には、どのような違いがあるのでしょうか?

●不動産査定とは

まず、不動産査定は不動産会社の担当者が、それまでの知識や経験を元に売れそうな価格を算出する方法で、査定を行うのに特別な資格はありません。

不動産の価格査定には「机上査定」と「訪問査定」の2つがあり、机上査定は物件の所在地や広さ、築年数などデータのみで価格を算出します。

一方、訪問査定は実際に現地に赴いて周辺環境や、住宅設備の整備状況など細かな部分も含めて査定を行います。

●不動産鑑定とは

一方、不動産鑑定は、国家資格者である不動産鑑定士が、鑑定評価基準に基づいて不動産の評価を行います。

不動産鑑定は不動産の価格形成メカニズムに基づいて、体系的な知識や技術を習得した専門家の行うもので、鑑定評価の結果、導き出される不動産鑑定額は公的な資料としても有効です。

不動産査定が無料で受けられ、査定結果は長くとも3日~1週間程度で聞けるのに対し、不動産鑑定はそれなりの報酬を支払う必要があり、また鑑定に数週間かかります。

■不動産鑑定評価額で必ず売却できるわけではない

不動産査定と不動産鑑定についてご説明しましたが、こう聞くとなんとなく不動産鑑定を選んだ方が良いように感じるのではないでしょうか。

しかし、例え不動産鑑定評価額が適正な価格であろうと、実際の売買額が適正な価格で決まるとは限りません。

不動産の売買は、不動産をできるだけ高く売りたい売主と、できるだけ安く買いたい買主の思惑のもと決まるもので、相場と異なる金額で売買が決まることもそう珍しいことではありません。

そう考えると、買主との価格交渉まで担当する不動産会社の担当者に査定を依頼したほうが良いのではないでしょうか。

■相続時は不動産鑑定を活用するべき?

一方、相続時には不動産鑑定を依頼した方が良いケースもあります。

相続時には、主に以下の3つの時点で不動産の価格を知ることが必要になります。

  1. 存命中の相続対策
  2. 死亡時の遺産分割
  3. 相続財産の売却時

それぞれについて解説します。

●存命中の相続対策

平成27年1月1日以降、相続税の基礎控除額は3,000万円+(600万円×相続人の数)に増税され、これまで以上に相続税支払いの対象となる人が増えました。

現金や不動産、株式などの資産を上記控除額より多く保有している場合、存命中から相続対策しておくことが大切です。

例えば、奥様が1人、お子様が2人いるような家庭では基礎控除額は5,400万円になり、相続財産が1億円あると6,600万円には相続税が課税されてしまいます。

○不動産の相続税評価額はどう算出するの?

相続財産の中に不動産が入っている場合、その金額の算出が問題になります。

現金であればそのままの額を使えば良いのですが、不動産は「いくらで売れるのか=時価」が正確には分かりません。

そのため、相続のルールとして、税理士が「財産評価基本通達」に基づいて算出することになります。

●死亡時の遺産分割

相続において、不動産の鑑定評価が役立つケースの多いのが死亡時の遺産分割時です。

実は、税理士が「財産評価基本通達」に基づいて算出した額は時価と大きく異なることも珍しくありません。

時価と相続時の評価額が異なると困った問題が起こります。

例えば、税理士の計算だと7,000万円の不動産が不動産鑑定士に鑑定を依頼すると1億円の鑑定評価額が出た場合で考えてみましょう(山形県の不動産・相続人は子2人・他の財産や基礎控除は考慮しない)。

相続人が2人なので、子Aも子Bも3,500万円ずつ相続する権利があります。
しかし、子Aは地元の山形に、子Bは東京に住んでいるので、話し合いの結果、子Bは不動産を相続しないことになったとします。

この場合、子Aは子Bに対して、3,500万円の代償金を支払うことで遺産分割する方法を選択することができます(代償分割)。

しかし、この不動産を売りに出せば1億円で売却できるとすると、子Bは3,500万円の代償金を受け取っても公平ではありません。

こうしたケースでは子Bが不動産鑑定士に鑑定評価を依頼して、実際にこの不動産が1億円の鑑定評価額を持つことが分かれば、公的な資料として主張することが可能になります。

●相続財産の売却

遺産分割が終了した後は、その相続財産を売却することもできます。

相続した不動産を売却する時は、普通の不動産売却と同じ方法で売却することになります。

不動産査定でも、不動産鑑定でも不動産の価値を知ることができますが、実際の売却価格は買主との交渉の結果決まることになります。

この場合、必ずしもどちらが良いとは言えませんが、お金のかからない不動産査定を選択する方がほとんどでしょう。

■まとめ

不動産査定と不動産鑑定の違いについてお伝えしてきました。

一般的な不動産であれば、不動産会社による不動産査定の方が無料なのでオススメですが、相続が絡むと不動産鑑定を活用した方が良いケースがあります。

それぞれの特徴をよく把握して、必要な方法を選択できるよると良いでしょう。

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株式会社Ilove
〒990-0834 山形県山形市清住町3-1-23

瀬川【山形不動産売却研究所】主任研究員

投稿者プロフィール

宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)資格を持っています。

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