地方の不動産は安くなる?日本で進むコンパクトシティ構想
現在、日本では地方を中心にコンパクトシティ構想が進められているのをご存知でしょうか。
コンパクトシティ構想は、その名の通り小さな都市を創る構想のことで、これが進められると地方の中でも、特に郊外では不動産の価格が安くなってしまうことが予想されます。
今回は将来を含めて郊外で不動産売却を検討されている方に向けて、コンパクトシティ構想をご紹介したいと思います。
■国が推進するコンパクトシティ構想
現在、日本では都市機能や居住地域をコンパクトにまとめるコンパクトシティ構想が各地で進められています。
コンパクトシティ構想は、これまでのように人口が増えることを前提とした街づくりではなく、人口が緩やかに減少していく時代の街づくりです。
具体的には、病院や学校、商業施設などを中心地に集中させ、住居もその周辺に集めることで街に活気を取り戻すことを目指します。
●山形市のコンパクトシティ構想
山形でもコンパクトシティ構想への取り組みは進められており、例えば山形市では「山形市都市計画マスタープラン全体構想案」において集約型まちづくりへの取り組みが取り上げられています。
■都市から離れた地域は過疎化が進む
これまでの人口が増えることを前提とした街づくりは、郊外でも家を作ってしまえば、周辺に家が増えていき、そこに街が作られていくというものでした。
例えば、基本的に住宅を建てることのできないエリアである「市街化調整区域」でも、50戸連たんなどの一定の要件を満たせば住宅を建てられる、というのもその考え方の一つでしょう。
自治体によって詳細は異なりますが、50戸連たんは100m以内のエリア内に50戸以上住宅があれば、住宅の新築を認める、といったものです。
これにより家が建てられるほど、新築可能なエリアが拡がっていきます。
しかし、コンパクトシティ構想はその逆の街づくりを行います。
具体的には、郊外は建築するための条件が厳しくなり、場合によっては建物が全く建てられなくなってしまう可能性もあります。
あなたの持つ不動産がコンパクトシティ構想が進められることにより新築不可能なエリアとなれば、知らない間に不動産の価値が大きく下がってしまっていた、という事になりかねません。
●中心地の不動産価格は高くなる?
一方で、コンパクトシティ構想も悪いことばかりではありません。
まだ実験段階中のコンパクトシティ構想ですが、その考え自体は現代日本の社会的背景と照らし合わせて合理的なもので、成功すれば大きな利益を得られる可能性もあります。
特に、都市機能や居住地域を集めるエリアでは交通機関の整備も進み、利便性が増すことで不動産価格が上昇することが予想されます。
これまでのように、人口減少がイコール不動産価格の低下につながるのではなく、人口減少に合わせた効率的な街づくりを進めることで、より価値の高い都市をつくることも不可能ではないでしょう。
■コンパクトシティ構想で郊外の人口減少が進む
コンパクトシティ構想は、都市に居住地域や都市機能を集中させるものなので、都市と反対側にある郊外の人口は減っていくことになります。
コンパクトシティ構想が進められれば、現在郊外に住んでいる人はそのまま住み続けることができますが、新しく人が入ることは制限されていくでしょう。
●進む空き家問題
コンパクトシティ構想が進められる一方、空き家問題も深刻化しています。
若い人が都市に出て行って帰らないと、郊外にある土地や建物を相続しても使われないケースが増えていきます。
こうした使われなくなった家を処分するのにもお金がかかってしまうので、処分もされず、利用もされない空き家が残ります。
空き家の増加は、住む人と建物の需給関係から、住宅の資産価値低下につながるだけでなく、災害時の悪影響や周辺エリアの犯罪増加につながる危険性があります。
データとして、平成25年に発表された総務省の「住宅・土地統計調査 特別調査」を見てみると、昭和38年に52万戸だった空き家は平成25年に820万戸にまで増えています。
日本では少子高齢化が進む一方で人口減少が進んでおり、一方で世帯数は微増、1世帯当たり人員は減っています。
人口は減っているのに、世帯が増えているのは1世帯当たりの人員が減っているからで、当面はそのための新しい住居が必要となります。
一方で、そうした状況にありながら空き家が増えているのは新しい住居が建てられ、古い住居が取り残されているからだと言えます。
これから人口減少問題は本格化し、世帯数もその内減少に向かうでしょう。
その時、空き家問題は今よりももっと大きな問題となるはずです。
●郊外では不動産売買が成立しづらくなる
コンパクトシティ構想では郊外への移住に制限がなされ、また郊外で進行する空き家問題により、その不動産価格は下がっていくことが予想されます。
もともとその辺りに住んでいた人はともかく、新しく住む土地を探している方にとって、資産価値の低い郊外への移住に魅力を感じづらくなります。
これらのことが積み重なることで、郊外では特に不動産売買が成立しづらくなってしまうでしょう。
■オリンピックまでに売却した方が良い?
不動産価格の変化の目安として、オリンピックが一つの指標となるとどこかで聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
オリンピックに向けて景気が良くなることや、消費税増税問題、住宅ローン金利問題などでオリンピック前まで不動産価格が上がり、オリンピック後は不動産価格が下がると予想されます。
特に郊外に利用していない不動産を持っている人は、今回ご紹介したコンパクトシティ構想や空き家問題を見越して、オリンピック前までの売却を目指してみてはいかがでしょうか。
■まとめ
コンパクトシティ構想はまだ実験段階で、今後の成果如何で継続されるか、方向転換されるかが決められていくでしょう。
コンパクトシティ構想が進められれば郊外の不動産価格が下がってしまうのは避けられないところです。
空き家問題と合わせて、今後の不動産売却計画の一つの指標として注目しておくことをオススメします。