実家の売却を自分でできるか?
不動産を売りたいという場合、たまたま友人や親せきなどが買い手候補になるようなケースを除いては不動産業者に買い手探しをお願いするのが普通です。
ただ別章で解説したように結構な額の手数料が必要になります。
数十万円、数百万円の手数料がもったいないということで、自分で不動産を売却することはできないものでしょうか。
今回は実家を売るとした場合に、業者に頼らず自分で売ることの是非を考えてみましょう。
■個人で売ることも不可能ではないが・・
結論から言えば、実家などの不動産を業者を介さずに自分で売ることも不可能ではありません。
買い手を自分で見つけて契約すれば良いわけですので、実際に友人や親せきなどに売るケースもありますね。
しかしこうした身近な人ではなく、買い手候補が誰もいない状況から一人で事を進めるのは現実問題として非常に難しく、積極的にお薦めできるものではありません。
それはなぜか、まずは不動産業者が仲介に入る場合どんなことをしているのか簡単にまとめてみます。
■不動産業者はこのような業務処理を行っている
不動産業者に仲介をお願いした場合、大体以下のような段取りで売却成功に導いてくれます。
①市場価値の算定
対象不動産の市場価値を算定して、「市場に出しても売れる価格」を見積もってくれます。
不動産は買ってくれる人がいて売ることができるわけですから、市場の買い手が納得できる価格の算定が必要です。
②宣伝広告
売り出し価格を設定したら市場にいる見込み客に向けて物件情報を開示し、宣伝します。
レインズという業界専用のネット媒体に物件を登録することもできますし、それ以外でも業者によって色々な宣伝チャンネルを有しているので、各社の保有する媒体をフルに活用して、地元の客層から遠くにいる客層まで、幅広く宣伝することができます。
遠くにいる客層に向けては主にネット広告などで、近場の客層には単独のチラシを作って戸別配布したり、フリーペーパーなどに物件情報を載せて配布地域にいる潜在客に情報を届けます。
※各社が保有する、あるいは利用する宣伝媒体、また実際の宣伝方法は各社で異なります。
③内見案内
反応があったお客さんには内見案内を行います。
各お客さんの日程に合わせて案内し、できるだけ物件が魅力的に映るように配慮しながら説明してくれます。
お客さんから発せられる要望や要求を捉え、実際の買い手候補の生の声の分析も行います。
④売買契約締結から引き渡しまでのサポート
買い手が決まったら、売り手と買い手、金融機関や司法書士などの関係者をまとめて売買契約締結や物件引き渡しまでの段取りを組んでくれます。
■もし自分でやるとしたら?
では上述したような実務を自分でやるとしたらどうでしょうか。
実際はイメージよりも手間のかかる実務が多いので大変です。
①市場価値の算定
査定だけをどこかの業者にお願いして、それを基に売り出し価格を設定することは可能です。
しかしライバル物件の価格変動などにつぶさに対処するには、自分で不動産を評価できる
目を持っていないと機動的な対処は難しいでしょう。
②宣伝広告
個人で宣伝を行うのは実際かなりの手間がかかります。
広告を打つ場合、物件を良く見せるための写真撮影などに工夫が必要です。
作成したチラシなどをプリンタで一枚一枚印刷するか、プリント業者にお願いするかは自由ですが、プリンタのインク代はバカになりませんし、業者を使う場合は当然費用がかかります。
そして作成したチラシをどうやって配布しますか?
自分で戸別配布するのはやってみると本当に疲れ果てます。
チラシ配布業者にお願いすればこちらも当然費用がかかります。
フリーペーパーなどで個人間売買の情報を載せることができれば儲けものですが、確実ではありません。
新聞や雑誌などの広告欄は非常に高額ですし、フリーペーパーも限られた無料欄以外は有料です。
ネット広告も業界専用のレインズは使用できませんからサイトの自主作成などで対処するしかありません。
このように、自分で売却するにしても宣伝広告では一定の費用はかかってきます。
③内見案内
物件の近くに住んでいて時間もあるのであれば内見案内は可能でしょう。
お客さんに都合を合わせることができれば、後は魅力的な物件紹介ができればOKです。
しかし遠く離れた実家の場合はその都度現地まで移動して案内するのは大変になるでしょう。
④契約締結から引渡し
契約は非常に神経を使います。
トラブルの無いように、契約書内で様々な決め事をしなくてはなりません。
不動産業者が関与する場合は不動産業界特有の起きやすいトラブルを事前に封じるために契約書内の条項を整備したり、重要事項説明書を準備したりしてくれますが、個人間売買ではこうした配慮も自分でしなければなりません。
不動産売買の契約トラブルなどをしっかり勉強していなければ安全な契約内容にするのは難しいでしょう。
売買代金の支払いや受領に関する事項、物件の引き渡しや所有権変更登記に関する事項、抵当権の抹消に関する事項、瑕疵担保責任に関する取り決めなど、トラブル回避に必要な各事項をもれなく整備するのは大変です。
特に瑕疵担保責任については物件引き渡し後に問題となることがあるので要注意です。
こうしてみると、自分で不動産の売却実務を進めるのはかなり大変であることがわかります。
不動産業者はやはりそれなりの手腕をもって、手数料を払うに値するプロとしての仕事をしてくれているわけです。
■まとめ
今回は実家など不動産の売却を自分で行うことについて考えてみました。
不可能ではないものの、親せきなど以外の市場にいる買い手を見つけて交渉し、売買取引を成功させるのは相当の手間がかかり現実的ではないことと、契約面でのトラブルの発生が心配です。
それらをクリアできる自信がある人でなければ、安易にお薦めできるものではありません。
不動産業者に支払う手数料は安くはありませんが、安全な取り引きをまとめるため、そして膨大な手間から解放される必要経費と考えるのが妥当ではないでしょうか。