兄弟がいると相続後、実家を売却するのは結構大変?

山形に実家があり、相続が発生し、遺産分割協議の結果、兄弟で共有持ち分を持つようになったケースでは、その実家を売却するのは一苦労します。

今回は、兄弟で持つ共有持分や、その売却についてお伝えします。

■法定相続分と遺留分

相続が発生した際、子供には「法律で定められた相続分」である法定相続分があります。

法定相続分は必ずしもその割合で分割しなければならない訳ではありませんが、子供には遺言でも侵害できない「遺留分」が認められています。

ここでは法定相続分と遺留分について解説します。

●子の持つ法定相続分

法定相続分は、相続人(亡くなった方)に奥様がいれば奥様に1/2、子供がいれば残り1/2を子供の数で均等に分けます。

また、奥様がいない場合には子供だけで相続分を均等に分けます。

例えば、奥様と子供が2人だった場合、奥様は1/2、子供2人は1/4ずつとなります。また、奥様がおらず子供が2人いるだけだった場合、その2人で相続分を1/2ずつ分け合います。

法定相続分は必ずこの割合で分割しなければならないわけではなく、遺産分割協議や遺言で相続の振り分けを決めることができますが、相続人同士の話し合いで合意しない場合の法律上の目安となります。

●子の持つ遺留分

遺留分は兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる権利です。

遺言や遺産分割協議で法定相続分以下の振り分けにすることは可能ですが、遺留分以下の振り分けにした場合、その法定相続人は遺留分の権利を主張することができます。

遺留分の割合は「親や祖父など直系尊属のみが法定相続人になる場合は1/3、それ以外のケースでは1/2」となっています。

奥様がいて、子供が2人いるようなケースだと子供に認められる遺留分は1/4の1/2で1/8、子供のみ2人のケースだと子供に認められる遺留分は1/2の1/2で1/4となります。

●遺言書がある場合

遺言書により相続の内容が決められていた場合、相続人全員の反対があるケースなどを除き、その通りに相続されますが、遺留分を持つ相続人は自分の権利を主張することができます。

相続人が自分の遺留分を侵害された際に、その侵害額を請求することを遺留分減殺請求と呼びますが、遺留分は遺言よりも強い権利で、遺言によって遺留分を侵害することはできません。

■共有持分がある場合の不動産の売却

上記法定相続分と遺留分の説明のように、子供には相続に関して大きな権利があります。

愛人に相続財産のほとんどを相続する旨の遺言書が見つかったとしても妻や子供は遺留分の権利を主張することができます。

そうでなくとも、実家となると、妻や、妻がいない場合には子供が相続する場合が多いでしょう。

実家以外に大きな財産があれば、例えば現金を長男に、実家を次男に相続するといったことも可能でしょうが、そうでない場合、実家を長男と次男で共有持分とするようなケースがあります。

こうしたケースで、相続後使うことがないので売却したい、となった場合は手続きが多少複雑なので注意が必要です。

●代償分割と換価分割

まず、実家以外に相続財産のないケースでの遺産分割の方法についてご紹介します。

そうしたケースでは、主に代償分割、もしくは換価分割と呼ばれる方法が使われます。

代償分割は共同相続人の内1人か一部の人が遺産を取得して、他の共同相続人に代償金を支払うことで分割する方法です。

長男Aと次男Bしかいないケースで、1,000万円の財産を長男Aが取得した場合、長男Aは次男Bに500万円を現金で支払うことになります(相続税の基礎控除は考慮していません)。

長男Aにそれだけの資力がなければ難しい方法です。

一方、換価分割は遺産を売却して得られた売却代金を共同相続人で分割する方法です。

相続した不動産が1,000万円で売れた場合、長男A、Bともに500万円ずつ売却資金を受け取ります。

代償分割と換価分割のほか、現物分割という方法があります。

次回以外に相続財産がなく、かつ長男Aと長男Bとで公平に分割する場合、実家の1/2ずつ共有持分とすることができます。

以下では、現物分割で共有持分を持った場合の手続きについてご説明します。

●売買契約には共有者の立会いが必要

まず、実家の売却を進めるにあたって、多くは長男と次男どちらか動ける方が手続きを進めるでしょう。

しかし、売却活動の結果、売買契約を締結することになった際は共有者(この場合、長男と次男)2人が揃って契約に立ち会う必要があります。

長男と次男がそれぞれ違う県に住んでいるような場合は日程調整等大変になることもあるので注意が必要です。

●登記時にも共有者の立会いが必要

もう一つ、売買契約が締結され、ローンなど買主の資金の準備の後、いざ決済と同時に登記をする際には共有者の立ち会いが必要となります。

不動産の売却には、少なくとも売買契約時と登記時の2回、共有者と買主が立ち会う必要があります。

●委任状で対応可能

売買契約時も登記時も立ち会うのが原則ですが、契約する場所や決済する場所から遠く離れた場所に住んでいるなど立ち会いが難しい場合には委任状に署名することで、立ち会いせずとも進めることも可能です。

詳しくは不動産会社の担当者や司法書士に確認してみると良いでしょう。

■まとめ

ご両親が亡くなって実家を相続することになったものの、兄弟がいるため共有持分が発生するケースについて、法定相続分と遺留分、代償分割や換価分割といった方法についてお伝えしました。

共有持分がある場合の不動産売却は、売却の手続き自体は通常の不動産売却と変わりませんが、原則、売買契約締結時や登記時には共有者の立会いが必要となるので注意が必要です。

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瀬川【山形不動産売却研究所】主任研究員

投稿者プロフィール

宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)資格を持っています。

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