相続した不動産を売るベストなタイミングはいつ?2019年版
こんにちは。税理士の林です。
今回の記事テーマは「相続した不動産を売るタイミングによる税金の違い」について。
<事例>
山形県山形市出身のAさんは、現在、宮城県仙台市に家庭をもって生活しています。
仕事も生活も仙台市にあるため、将来的に山形市に戻る予定はありません。
平成28年8月15日に山形の実家(一戸建て家屋)に住む母が亡くなり、1人息子のAさんが実家の家屋とその敷地を相続しました。
Aさんは愛着のある実家のため相続したものの、空き家の管理が大変で、固定資産税というコストもかかり、最近では実家を手放したいと考えるようになりました。
そんなある日、相続した空き家やその敷地を売った場合に売却益にかかる所得税を減額する特例があることを、Aさんはインターネットで知りました。
Aさんがこの特例を使う場合、いつまでに、どんな方法で売る必要があるでしょうか?
<税理士 林の回答>
居住用財産の3,000万円特別控除という特例があります。
相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた一定の要件を満たす家屋及びその土地等を相続した相続人が、一定の耐震基準に適合する改修を行った後に譲渡した場合、または取り壊し後に更地の状態で譲渡した場合、居住用財産を譲渡した場合に該当するものとみなして、3,000万円特別控除が適用されます。
空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の要件
この特例は、近年の空き家問題解消という目的に限定して利用させるため、細かな要件が決められています。
- 対象者
- 相続の開始直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋(被相続人居住用家屋)およびその敷地(被相続人居住用家屋の敷地等)である土地等を相続または遺贈(死因贈与含む)により取得した個人が対象
- 家屋の要件 以下の1~3のすべての要件に該当する被相続人居住用家屋が対象
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
- 売却時期 以下の1~2のすべての要件に該当する売却が対象
- 平成28年4月1日から平成31年12月31日までの売却
- 相続開始時から相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却
- 売却金額の制限
- 売却代金が1億円以下であること
- 譲渡の形態 売却の形態については以下1または2に該当すること
- 改修工事をした後に売却する場合の要件 以下のすべての要件に該当する必要がある
- 相続時から売却時まで、事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
- 譲渡の時において一定の耐震基準に適合していること
- 被相続人居住用家屋の除却、全部の取り壊しまたは滅失後に被相続人居住用家屋の敷地等を譲渡する場合の要件 以下ののすべての要件に該当する必要がある
- 相続時から除却等の時まで、事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
- 相続時から売却時まで、事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
- 除却等の時から売却時まで建物または構築物の敷地の用に供されたことがないこと
- 売却する相手の制限 売却する相手が、以下1~6のいずれにも該当しないこと
- 配偶者および直系血族(祖父母、父母、子、孫など)
- 売却した個人と生計を一にしている親族(①を除く)
- 居住用財産を取得した後、売却した個人と同居する親族(①、②を除いた兄弟姉妹など)
- 売却した個人と事実上婚姻関係にある人およびその親族で生計を一にしている人
- 売却した個人から受ける金銭などで生活している人及びその人の親族で生計を一にしている人(離婚によって財産を分与された人や売却した個人の使用人などを除く)
- 同族会社
まとめ・特例を使うなら平成31年12月31日までに売却すべき!
Aさんが実家を手放す方法としては以下の①または②が考えられます。
なお①または②のいずれの場合でも平成31年12月31日までに売却する必要があることに注意してください。
- 実家の空き家を一定の耐震基準に適合する改修工事を行ってから、中古住宅として売却する
- 実家の空き家を取り壊して更地にしたうえで土地として売却する
この特例の対象となる家屋は、「昭和56年5月31日以前に建築されたこと」が要件(「家屋の要件」を参照)であり、30年以上も前の家屋です。そのため耐震改修工事を行っても買い手はつきにくいことが予想されます。
現実的には②家屋を取り壊して更地として売却する可能性が高いでしょう。
【免責事項】
本稿は執筆時点の法令にしたがっていますが、すべての適用要件を網羅的に記載したものではありません。本稿により損害が生じたとしても一切責任を負いません。
特例の適用にあたり、税理士や税務署など責任を持ってアドバイスしてくれる専門家に必ず相談してください。